心が折れる


 以前も少し書いたことがあるが、故事などに由来するような言葉でなければ、使われ方が変化することはある程度容認していいと考えている。
 今回文化庁が行った「国語に関する世論調査」の内容を見ると、ある意味やむを得ない誤用の例も多かった(そのような言葉を最初から選んでいるので当然ではある)。

 そんななかに、「心が折れる」という表現も含まれていたのであるが、語源に関しては「心折れる」から来ているのではないかとの説があった。しかしながら、この言葉に関しては女子プロレスラー神取忍が最初に使ったという説がもっとも有力なようである。

「あの試合のとき、考えていたことは勝つことじゃないもん。相手の心を折ることだったもん。骨でも、肉でもない、心を折ることを考えてた。ただ、それだけを考えていたんで、相手をいためつけようとは思っていなかった。本当に、相手をいためつけることなんか、目的じゃなかったよ。
 あのね、私、柔道やってたじゃん。だから、勝負に負けるときっていうのはさ、最初に、心が折れるってこと知ってたんだよ。
 だからさ、それを、佐藤さんにも味わってもらおうと思ったんだよ。
 もちろん、腹が立ってたわけでよぅ、目なんか狙われて、カッとしてたわけでよぅ、だけど、だから殴ってやろう、なんて思ったわけじゃないもん。ただ、この人は、今まで、一度も、心が折れた音を聞いたことがないなって思ったんだよ。だから、こんな危なっかしい、嫌なことをするんだなって。
 だからさ、心を折ってやろうと思ったんですよ。その音を聞かせてやろうと思ったのよ」


井田真木子.プロレス少女伝説


 神取忍が「心折れる」という言葉を転用した可能性もあるが、上記引用の文脈から推測するとどうも違うように思える。神取忍が柔道家・プロレスラーとして経験したことを知ることで、この言葉の意味もよりよく理解できるのではないだろうか。


今日の動画
  【和楽器バンド】天樂 TengakuVOCALOID
   https://www.youtube.com/watch?v=Q2meWkWqc-I