トムラウシ山遭難について

●参照URL  トムラウシ山遭難事故  http://ja.wikipedia.org/wiki/トムラウシ山遭難事故
今回発生した遭難事故については、まだまだ情報が不足している部分も多いですので、あらためて考察したいと思います。


 最初に今回の遭難発生のニュースを見たとき、まっさきに頭に思い浮かんだのが「ドキュメント気象遭難」という本でした。その本の中で、2002年7月に発生したトムラウシでの遭難による死亡事故の詳細が書かれていたからです。この本には全部で7つの遭難事故が記述されているのですが、もっとも印象に残っていたのがトムラウシの遭難だったのです。
なかでも、低体温症による脳梗塞で亡くなった女性(59歳・リーダー)の最後の言葉、「おとうちゃーん、おとうちゃーん。おかあちゃーん、おかあちゃーん」(低体温症のため錯乱している)の部分はあまりにも悲劇的です。
この女性が率いていたパーティ(女性4人)ですが、軽アイゼンを装備リストに加えているにもかかわらず、なぜかだれもラジオを持っていないなど、装備面での問題もあったように見受けられます。この遭難の時には台風の上陸が重なっていたわけですが、そのような場合はやはり気象情報や気象通報の情報とそこからの判断がきわめて重要になります。よって、ラジオを持参していなかったのはかなり問題だと思います。


登山というのは山に登っている間だけのことをさすのではなく、計画・訓練・装備の準備の段階から、最終的に自宅にたどりつくまでをすべて含んでいます。それらのすべてが登山なわけですから、その一部を人任せにしてしまうようなことではいけません。たとえツアー登山のようなものでも、自ら情報を集めて必要な装備もそろえておく必要があります。しかし万全の体調・装備で山に臨んだとしても、それを上回る自然条件や環境にはまりこむと簡単に遭難死するのが山というものです。2002年の遭難や今回の遭難を教訓として、今後このような犠牲者が出ないように、登山者個人個人が気をつけていくしかないでしょう。

●関連日記  http://d.hatena.ne.jp/SASGSG9/20061018

 北海道の山をホームグランドとする市根井が指摘するのは、本州の山と比べたときの、北海道の山の特殊性である。二〇〇二年を例にとれば、北海道の山でシーズン最後に雪が降ったのは、六月下旬のことであった。シーズン最初の雪はと言うと、なんと八月である。一年のうち雪が降らなかったのは七月だけなのだ。
 たしかにこの年は異常気象だったというが、たとえ平年にしろ、北海道の山の気象は本州の山の常識では推し計れるものではない。それを本州の登山者は知らない。本州の山も北海道の山も同じだろうと思っている。そして痛い目に遭う。実際、この年の遭難者のほとんどは北海道以外からの登山者であった。


ドキュメント気象遭難  羽根田治著  p143

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