患者はだれでも物語る 医学の謎と診断の妙味


患者はだれでも物語る―医学の謎と診断の妙味
患者はだれでも物語る―医学の謎と診断の妙味リサ サンダース 松村 理司

ゆみる出版 2012-12
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 膵癌(すい臓癌)であることが確定するまでに40日ほど日数がかかった。その間に何人かの医師に診察してもらったのであるが、正直不安を強く感じるレベルの医師がいた。
 上腹部の痛みがそもそもの始まりだったのだが、キャベジンを服用することで治まったりしていた(これがそもそも問題だったのだが・・)。1回目の入院をする数日前にはっきりと症状が出たのが尿の色が紅茶のようになったこと。脱水症状になっているのかと思って水分を多くとってもほとんど色が変わらず。おかしいと思っていると今度は便の色がほとんど白の状態になった。肝臓がおかしいと思って白目を見てみると明らかに黄色かった。シャツを脱いで見ると体全体が黄色くなっている。すぐにかかりつけの開業医のところへ行き、とりあえず問診。これまでの経緯を説明して、血液検査を至急でしてもらうことに。帰宅後に黄疸が出ていたことを言い忘れていたことに気づく。しかしその開業医は白目も見なかったし、体の色も見なかった。尿や便の色については説明したにもかかわらずである。肝臓に問題があるとの診断に至っていなかったことは、胃薬を処方されたことでもわかる。
 その日の夕方にその医院から電話があり、至急近くの救急センターがある大病院へ行くよう言われた。肝臓に関する血液検査の数値がとんでもなく異常な値になっていた。しかし、そのときの医師の話からすると、どうやら看護師は私の黄疸に気づいていたもよう。医師だけが黄疸にまったく気づいていなかったのである。


 続いて救急センターへと平然と自力で向かっていった私は普通に診察を受ける手続きを行い、しばらく待ったのちに救急医の診察となった。開業医が書いた紹介状はその救急医は見ているはずである。しかし一から問診を行うのは医師として当然のことだ。同じ話をしてのち点滴をすることになった。それも当然の流れであろう。点滴を受けて十数分経った頃に医師が2人ほど入ってきて、黄疸が出ていないかを確認し始めた。私の白目を見て「ちょっと出てますね」と言ったのだが、ちょっとどころではないはずだ。もともと肌の色が白いのでよりはっきり分かるのだが、全身まっきっきなのである。もうちょっとしっかりと観察・診察をしてもらいたいと思った。

 結局その後は検査へと移行していき、造影CTなどを行いつつ正確な診断へと至るわけだが、初期段階での診察の甘さに正直震え上がった。
(黄疸が出た理由は、膵臓にできた腫瘍が胆管(肝臓で作られた胆汁が流れ出る管)を圧迫してせき止めていたため。胆汁が肝臓から流れ出ないため血液中に流れ込み尿の色を濃くした。また便に色をつけている胆汁が出てこないため便が白いままだった)。


 前置きが長くなったが、表題の本である。これも今入院している病院の図書室で見つけて読んでいる。米国の著者が書いたものであるが、米国でさえ医師が患者を診断する技術がないがしろにされて、以前より衰退していることが書かれている。
 診察や検査は原疾患を特定するための手段である。検査だけではわからないような難しい症状というのがあり、それを正しく診断するために医師が目で見て、耳で聞き、手で触ることで診察していくのだ。もし自分が今回の病気になって診察を受けていなければその問題について身をもって知ることはできなかっただろう。患者側もそのような問題があることを予備知識として持って置くにこしたことはないと思うのである。


今日の動画
  John Coltrane - I Wish I Knew
   https://www.youtube.com/watch?v=ju02Q2dfYDw