アメリカ陸軍OPFORとAAR
雑誌の整理をしたときに、2006年2月号のハーバードビジネスレビューを発掘いたしました。
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 02月号 | |
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●参照URL https://www.bookpark.ne.jp/cm/contentdetail.asp?content_id=DHBL-HB200602-008
US Army A Leader's Guide to After-Action Reviews http://www.au.af.mil/au/awc/awcgate/army/tc_25-20/tc25-20.pdf
上記リンクにその表紙が出ていますが、兵士が鉛筆(お尻の部分に消しゴムのついてるやつ)でリーガルパッドにメモをしているイラストが描かれています。
このイラストこそ、アメリカ陸軍のOPFOR(常設仮想敵部隊:Opposing Force)で常に行われている、AAR(事後検討:After Action Review)を象徴するものです。
AARが日本で一般向けに紹介されたのは、この号のハーバードビジネスレビューの論文が初めてだと思います。その後、AARに関するビジネス書やミリタリー書、雑誌の特集などは私の知る限りでは見たことがありません。また、ネットにはわずかにAARに関する記事が見られますが、それらは本来のAARからほど遠い内容になっています。
せめて参考にでもなればと、概要だけ紹介したいと思います。興味のある方は、ぜひ上記リンクのバックナンバーを購入されることをお勧めします。
■常勝部隊「OPFOR」
OPFORの仕事は、アメリカ陸軍の各部隊が実戦演習をするときに、「敵」の役割を担うことです。
敵の正規軍からテロリストの役まで、訓練の目的に応じてさまざまな役割を演じるわけです。そして、人数・装備・資源・情報など、ほぼあらゆる面で不利なはずのOPFORが、ほとんどの場合勝利します。それを可能にしているのが、AARなのです。
OPFORで行われるAARは以下の4要素から成り立っています。
・ブリーフィング(状況説明)会議
・長時間の計画立案・検討会議
・全員による膨大なメモ
・過去の教訓と未来の行動との関連づけ
上記の要素をもとに、AARミーティングは一週間に何十回も開かれます。
そのミーティングのルールとしては、
・積極的に発言せよ
・批判を恐れるな
・会議中は階級を忘れよ
・メモを取れ
・自分の問題に集中せよ
・上の問題は気にするな
・率直な態度を忘れない 等々
そしてAARミーティングでは以下の点が追及されます。
・どのような結果を意図していたのか
・実際の結果はどうだったのか
・その理由は何か
・このまま維持すべき点、あるいは改善すべき点は何か
AARの目的の一つとして、「成功と失敗を区別し、将来の行動の成否を事前に予測する能力を高める」というものがあります。なぜなら実行段階でトラブルが起こる最大の原因が、予測が間違っていたことにあるからです。
予測を行うための思考法を修正することにより、計画立案、状況への対応、成功を収める能力を総合的に向上させることが可能になります。
泥縄式に技法や手続を修正しても、一つの問題にしか効果がないのです。
実戦訓練中にも短時間のAARミーティングが繰り返されます。そこで問題点を改善するための仮説が立てられ、それは即実行に移されて検証されます。
間違いの修正ばかりでなく、ある状況下で有効だった戦術が、別の環境や敵に対しても機能するのかを検証することもあります。
このようにして、過去の経験を未来への能力へと具体的に結びつけていくわけです。
人から与えられた教訓をより多く吸収することよりも、みずから教訓を学び取る能力を身につけることの方が、将来的にはより価値のあることだと言えるでしょう。
以上、概略のみを抜粋した形になりましたが、もとの論文を是非読んでいただきたいです。企業でのチームワークや個人レベルでの能力向上にとても役立つ内容だと思いますので。