戦場を駆ける医師 〜愛、勇気、憐憫

 翻訳本のタイトルというのは、その本の売れ行きを大きく左右する、とても重要なものであります。

現在のように、ネットで検索して書籍を買うというスタイルが一大市場を形成している場合、より的確に本の内容をタイトル(サブタイトルも含む)で表現する必要があります。


今回紹介する「戦場を駆ける医師」は、その点で見事に失敗しています。当然の結果として、現在絶版となってしまってます。

戦場を駆ける医師―愛、勇気、憐憫
戦場を駆ける医師―愛、勇気、憐憫リチャード ヴィラー Richard Villar 熊谷 千寿

原書房 1999-02
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おすすめ平均 star
star第22SAS連隊軍医官

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■特殊部隊員にして外科医
 アンディ・マクナブを筆頭に、何名かの元SAS隊員が、自らの経験やSASについて本を書いています。それらの本ももちろんおもしろいのですが、彼らは生粋の職業軍人であり、そのキャリアも軍隊一筋です。

一方、リチャード・ヴィラーは兵士であると同時に外科医てあり、SASに入隊したのも、第三世界で医療を行うための経験を積むためでした。
医師としての目を持っているため、SASの選抜訓練が与える身体的な影響や死の危険、戦闘訓練やジャングル訓練で発生する数々の怪我、病気などの詳細が書かれています。


目次
第1章 名案
第2章 外科医か、はたまた兵士か?
第3章 そこのくそいまいましいボタンを押してくれ
第4章 ろくでなしのジャングル
第5章 砂漠のインポテンツ―秘密の治療
第6章 ひとりいくら?
第7章 死んでいたかもしれない
第8章 大いなる山
第9章 苦悩に満ちたレバノン
第10章 サラエボの忘れ去られた人々


上記の目次を見るとわかりますが、入隊のいきさつから入隊後の訓練、軍医としての仕事、そしてフォークランド紛争での経験など、非常に盛りだくさんです。
しかも、エベレストへ登山遠征にまで行ってます。


本のタイトルから、「外科医(と同時にSAS隊員)」を想像してしまいそうですが、実際は「SASが心底好きなSAS隊員(おまけに外科医)」です。
アンディ・マクナブの「SAS戦闘員」に匹敵するくらい、SAS関連本の中ではおもしろい本だと思います。