JR福知山線 脱線事故


■NTSBの事故調査手法
NTSBとは「National Transportation Safety Board(米国交通安全調査委員会)」のことで、アメリカで鉄道事故や航空事故などが発生したとき、事故調査にあたる組織です。
 その事故調査手法の概要として、
 1.事故にいたるさまざまな要因や関連事項をすべて時系列に洗い出す
 2.洗い出した事項の連鎖関係を明らかにする
 3.「4 M’s(4つのM)」という分類に各項目をあてはめる
 4.事故を構成した諸原因のうち、最も直接的で主要なものを絞って記述する
 5.勧告(再発防止のために、誰が、何を、いつまでにやるか)


3番目の「4つのM」とは、Man Machine Media Managementのこと。
今回の脱線事故にあてはめると、
 Man=運転士、車掌、輸送指令、整備士ほか
 Machine=列車、レール、ATSほか
 Media=交信、ダイヤ、標識、信号
 Management=JR、行政機関が安全のためにやったこととやらなかったこと
だいたいこのような感じになると思われます。


事故調査は大変時間がかかるものなのですが、今回の事故の状況から浮かびあがった事実として、
 「速度超過時に機能するATSが使われていなかった」
ことは大変重要かと思います。

つまり、
 1.運転士が睡眠時無呼吸症候群に起因する居眠りをする可能性
 2.運転士が何らかの発作により、運転不能状態になる可能性
です。上記いずれかの状態に運転手が陥った場合、先頭車両に乗り、しかも運転士のことを見ている人間にしか異常を検知することができません(夜間には運転席フロントガラスへ車内の明かりが写り込まないようにブラインドがおろされるため検知不能
 もし運転士が上記いずれかの状態に陥り、速度が速くなる方向へとアクセルが動いた場合、最後の砦はATSとなります。しかし、今回事故が発生した箇所のように、速度超過に対してATSが機能しないような場合、脱線の可能性が非常に高くなります。


 そして報道でもたびたび取り上げられている「列車の遅れを取り戻そうとしたため速度超過した」可能性ですが、間違いなく今回の原因項目のひとつに入ると思います。この列車の運転士は以前にも停車位置を行きすぎがことにより処分を受けていたらしいので、前の駅で延発になったことが相当なプレッシャーになっていたと思われます。本来ならこのような場合にも速度超過に対するATSが備えられていて機能すべきなのですが・・・


 一刻もはやく問題点をあぶり出し、徹底して改善に努めて欲しいところです。現状のままでは、いつまた同じような脱線事故が発生してもおかしくないと思われるからです。
最後に、亡くなられた方々の冥福をお祈りします。


●参考文献
「失速・事故の視角」柳田邦男