「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか 低体温症と事故の教訓」


トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか
トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか羽根田治 飯田肇 金田正樹 山本正嘉

山と渓谷社 2010-07-23
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 しばらく売り切れになっていたため購入できませんでしたが、ようやく入手しました。内容は3月にPDFファイルとして公開されている「トムラウシ山遭難事故調査報告書」と大きくだぶっています。ツアー参加者数名への取材内容を含んだ事故概要の細部と、生還したガイドのうち1名へのインタビューに関しては新しい情報と言えます。


  ●参照URL  「トムラウシ山遭難事故調査報告書」http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf



■低体温症に対する知識の欠如
 この遭難に関しては、ツアー登山そのものによる組織事故であったと私は考えています。
  ●参照日記  http://d.hatena.ne.jp/SASGSG9/20090726


 また、ツアー参加者だけでなく、ガイドまでもが低体温症に関してあまりにも知識が不足していたことも死者を増やした大きな原因であったと言えると思います。
 季節にかかわらず低体温症が起きること、それも死に至るほど症状が悪化することがこの遭難事故によってより知られることになりました。しかしながら、現在登山をしている人たちの中でこれらの報告書や書籍を読んだ人がどれだけいるでしょうか。この遭難事故で得られた教訓は、あらゆる登山家や登山者が学ぶべきだと思います。


 厳しい気候に無防備でさらされていると、低体温になることがある。たいていは数時間にわたってゆっくりと体温が下がり、ついには心機能が停止する。低体温は酒の酔いに似ている。初期段階はとても楽しい気分になる。たいていはそんな症状が進んでいることにすら気がつかない。わたしはウェールズの山脈地帯から、三体の死体を回収したことがある。みな生前は聡明な人物だった――そして、強靱な肉体の持ち主だった。どんな理由があったのかは知らないが、彼らは自分の肉体の限界を超えてしまったのだ。ここから、はっきりした教訓が読み取れる。何人たりとも、雨風にさらされて平気なものなどいないのだ。生き延びるには、雨風を避けることが大切なのだ。低体温で命を落とすこともある。うそだと思うならそれでもいいが、雨露をしのげるような場所を探して、茶を入れても構わないではないか。


   「戦場を駆ける医師」リチャード・ヴィラー p30

戦場を駆ける医師―愛、勇気、憐憫
戦場を駆ける医師―愛、勇気、憐憫リチャード ヴィラー Richard Villar

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 この本の著者であるリチャード・ヴィラーは元SAS第22連隊隊員であり医者でもあります。翻訳では「低体温」と表記していますが、原書ではおそらく"hypothermia"(低体温症)と表記しているのではないかと思われます。