「解放の日」 アンディ・マクナブ著

解放の日
解放の日アンディ・マクナブ 伏見 威蕃

角川書店 2007-05
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 原書は2002年の出版であります。翻訳されるまでに、あまりにも期間があきすぎです。しかし、このシリーズの魅力には伏見 威蕃 氏の文体が大きく貢献しており、他の翻訳家には任せて欲しくないところ。ある程度待たされるのはしかたのないところでしょう。


 作品の内容については実際に読んでいただくとしまして、作品中で主人公のニック・ストーンが愛用している装備について書きたいと思います。


■腕時計
 ニック・ストーンシリーズで、初期のころから彼が愛用している腕時計は「Gショック」でありました(Gショックは作者であるアンディ・マクナブも愛用していたようですが、1995年に制作された映画「ヒート」で戦闘シーンのアドバイザーを務めた際、俳優のロバート・デ・ニーロにプレゼントしてしまったようです)
 GショックのあとはBabyGを愛用していましたが、解放の日では「トレーサー」を使用しています。


■トレーサー
 文字盤と針に、ガラス管に封入した「トリチウム」という放射性物質を使用。トリチウムは自己発光するため、完全な暗闇でも光り続けます。トリチウム半減期は12,3年で、かなりの長期間バックライトなどに頼ることなく時刻の確認が可能です。
ただし、トリチウムの光りはかなり弱いので、過度の期待は禁物。時計ショップに行くと、トレーサー以外のトリチウムを使用した時計(ルミノックス)などが展示されてたりしますが、紫外線蛍光灯を使用することで過度に発光させ、事情を知らない消費者が勘違いをしそうな演出をしてたりします。
あくまで「暗順応」後に威力を発揮するとの認識を持っていた方がいいでしょう。


 先日、私もトレーサーを購入しました。十数年ぶりのアナログ時計であります。
 ●トレーサー H3 タイプ3

 シリーズ中、一番安いのを選びました。とにかく軽い。バンドの脱着がしづらかったので、ウレタン樹脂のバンドに交換。ついでにバンドにセットするコンパス(SILVA製)も装着。

 ●SILVA シルバシルバアクセサリーコンパスNo.40 ECH136

 18〜19mm幅のバンドに装着可能。この手のコンパスとしてはもっとも「目立たない」です。これがあれば、百貨店や大阪駅前の地下街で迷子になるのを防止できそうです。


■レザーマン
 このシリーズでは欠かせない装備のひとつ。今回の作品中でも、


「もちろん<レザーマン>の万能ツールも持ってきた。それなしではぜったいに外出しない。」


とまで言わしめています。


 私もレザーマンの愛用者でありますが、日本国内での携行には問題があります。ノーマルサイズのレザーマンでは、ナイフブレードが銃刀法に引っかかるからであります。そのため、日本向けにナイフブレードがないタイプが生産されたこともありました。
ブレード付きのノーマルサイズを携行する場合は、十分な見識と覚悟を持たねばなりません。もしくは年がら年中登山スタイルで通すしかないでしょう・・・


■総評
 ニック・ストーンシリーズの特徴である、恐ろしいまでのディテールへのこだわり。プロットを犠牲にしてまで細かい描写を書き連ねる作風は、読み手を選びます。特殊作戦や諜報技術の詳細を知りたい人にはとても楽しめるでしょうが、ハリウッド的なエンターテイメント(荒唐無稽なおとぎ話)を期待する人にはお勧めできません。
 アンディ・マクナブの作品を読む場合、それがたとえ小説であってもポストイットは欠かせません。任意のページ(冒頭の方がよい)にフラグタイプのポストイットを1枚ずつ扇形に貼り付けておき、マークしたいページがあれば都度貼り付けていくようにしましょう。
あと、本屋でかけてくれる紙製のブックカバーには、刺繍糸をテープで貼り付けると「しおり」のできあがりです。

以上の準備をして、是非アンディ・マクナブの世界に浸ってみて下さい。