聖の青春

聖(さとし)の青春 (講談社文庫)
聖(さとし)の青春 (講談社文庫)大崎 善生

講談社 2002-05
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おすすめ平均 star
starあまりにも眩しい生き方
star悲しみ・慈愛・くやしさ・・・さまざまな感情が入り混じる本
star命を燃やして生きた彼が羨ましい

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 人が生きていく中では、いろいろな人や出来事に出会ったり、また別れたりします。
そして、あるときにはまったく重要性を感じていなかったことに対して、もう取り返しのつかないほど時間が経過してから、「ああ。こうしておけばよかった・・」などと、戻せない時間を思い愕然とすることがあります。


関西将棋会館
 私はかなり昔に1年半ほど将棋に熱を上げたことがあります。将棋の本も数十冊買い込み、雑誌も数種類定期購読し、大阪市福島区にある関西将棋会館2Fの将棋道場に通いました。そして、アマ1級になってしばらくしたある日、将棋をやめました。
その後は、将棋に関する情報にはほとんど関心が無くなったのです。


その後ある会社に就職したのですが、偶然にもその会社は関西将棋会館から歩いて数分くらいの場所にありました。しかし、将棋に興味を無くしていた私にとっては、その偶然も将棋を再開するきっかけにはならなかったのです。


■「将棋の子」
 世間の動向にあまり興味をもたない私にとって、村山聖棋士が亡くなったことや、その後「聖の青春」というノンフィクションが書かれたこと、また同じくマンガ化やドラマ化されたこともほとんど知りませんでした。

 そして、先日行っていた書籍の整理中に、買った覚えのない「将棋の子」という本を発見。その本のテーマは奨励会という、プロ棋士養成機関についてのものですが、「なんでこんなん買うたんやろ」と不思議に思いつつ、最初のページに目を通したのです。
そしてその本に没頭してしまいました。途中何度も涙が出てしまいます。

結局この本が読み終わるまで、書籍の整理は中断してしまいました。読み終わった後は整理を再開したのではなく、そのままブックオフへ行き、同じ著者による「聖の青春」を購入したのでした。


 聖の青春も一気に読み終わったのですが、読むスピードは通常の20倍くらいかかったと思います。とにかく涙が出てしょうがないのです。
大人になってからは涙が出ることがあっても、号泣するようなことはありませんでしたが、この本ばかりは号泣しました。
村山さんが棋士として多くの時間を過ごした関西将棋会館の近辺は、先に書いたように私にとってもなじみの深い場所であるため、よりリアルに本のなかの描写(食堂・本屋・公園など)が理解できるのです。
しかし、村山さんがこのあたりを「とぼとぼ」歩いていたころ、私は将棋にまったく興味をなくしていたわけで、同じ期間・同じ空間を生きていたにもかかわらず、「将棋」という世界から遠ざかっていた私は、村山さんとはまったく無関係な人生を送っていたということになります。
 細々とでもいいから将棋を続けていれば、彼が残した人生の軌跡をリアルタイムで目撃することができたのにと、悔やんでも悔やみきれないものがあります。


 昔ある人に次のようなアドバイスを受けたことがあります。「趣味は最低4つ持っておきなさい。室内でやるものと室外でやるもの。そして相手が必要なものと一人でもできるもの」
将棋は室内でやるものですが、相手がいてもいなくても楽しむことのできるゲームです。
今回「聖の青春」を読んだことを契機として、三段になることを目標に将棋を再開させたいと思っています(しかし、実家に残していた将棋の本は、ほとんど捨てられてしまったらしい・・・)