SAT隊員殉職

 まずは亡くなられた林一歩さんのご冥福をお祈りします。

報道を見ると、大変不幸な偶然が重なった結果のようであり、装備や戦術面で防げたのかは疑問であります。



■交渉
 もっとも問題かと思われるのが、最初に銃撃されて負傷していた警官を救出するとき、支援班としてバックアップにあたっていた隊員が銃撃を受けたこと。のちの報道では、犯人は息子の声を聞かせるよう要求していたようです。そうであれば、それを交換条件として、負傷した警官を救出することを了解してもらうよう、犯人と交渉しておくべきだったのではないでしょうか。
欧米の警察組織と比べて日本の警察がもっとも遅れているのは「交渉・ネゴシエーション」技術であると言われています。
一般には誤解されていることが多いですが、欧米と比べると日本の警察は交渉をないがしろにしたまま「突入」することが多いです。欧米(特にアメリカ合衆国)で採用されている、体系化され理論化された交渉技術が取り入れられていなかったため、その面では現在も他の先進国より大きく遅れています。



■マスコミの中継
 今回に限ったことではありませんが、マスコミの報道合戦はなんとかして欲しいところです。
人質事件というのはたしかに視聴者の関心も高かったりしますので、マスコミが集まるのはしかたがないかもしれません。しかし、警察側の戦術を犯人にさらけ出してしまうような報道のしかたは慎むべきです。最近ではワンセグケータイなどの普及により、犯人側にとって簡単に情報が入手可能だからです。

●2000年のバスジャック
 過去の私の行動記録を検索したところ、以下の記録が見つかりました。

以下引用−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

2000/05/04 木 晴れ
04:00 起床。
05:10 テレビをつけると、前日からのバスのハイジャックがちょうど解決したところだった。
SATらしき隊員が10名くらいバスに近づき、両側の窓ガラスをフーリガンツールで打ち破り、スタングレネードを一発放りこんだ。同時に、ゴムラバーつきの幅広はしごをかけ次々に突入。
これらの実況はすべてNHKで見たが、現場にいる記者も含めてあまりにも勉強不足だ。
06:20 朝食 ししゃも もち6個。

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(なぜ5月にもちを食べているのか(しかも6個も)は自分でもわけがわかりません)
このときはすでに解決直後だったため、実際の突入が生中継されたかどうかはわかりません。もちろん当時はワンセグケータイなどなかった訳ですが、小型の液晶テレビは売られていました。もし生中継されていたとして、犯人が携行タイプのテレビを持っていたとすれば、人質に大きな危険が及んでいた可能性があります。
報道管制をどのレベルまで行うのかは難しい問題ですが、人質事件の解決において早急に取り決めをすべき問題の一つでしょう。

※話がそれますが、バスジャック事件の日記で「バスのハイジャック」と表現していますが、本来はどのような乗り物でも「ハイジャック=Hi Jack」が正解です。
ハイジャックの語源は、1920年代のシカゴにあります。当時シカゴで金庫破りを生業としていた男が、もっと割のいい商売として密造酒を運ぶトラックの強奪を始めました。強奪するときの文句が「Hi Jack!=やあ、だんな!」だったので、乗り物を強奪(乗っ取る)ことをハイジャックと呼ぶようになったのです。



■銃の規制
 以前は暴力団関係者しかほとんど持っていなかった銃が、一般人に拡散していると言われています。多くの暴力団関係者が銃を所持しながら、それを実際に使用しないことは、ある意味驚嘆してしまいます。一般の法律よりも厳しい、彼ら独自の規律が銃器の使用を抑止している面があるのかもしれません。
しかし、一般人の手にその銃が渡ったとき、そこにはヤクザ社会の規律は存在しません。銃を入手している時点で、その一般人は法律を守らない(無視する)人間であるので、そこから先の自己規制も存在していないと考えなければなりません。
銃刀法の刑罰を現在よりも厳しくして、入手すること自体をハイリスクな行為であると認識させていかないと、今回のような事件はけっして無くならないでしょう。