ラスベガスでの銃撃事件


 事件発生直後から、CNNではこの事件がBreaking newsとしてずっと放送され続けた。現場に居合わせた人たちが記録した動画も多数流れた。
 現時点で真相はまだはっきりしていないが、分かっている情報から少し考察しておきたい。


 発生当初は複数犯による銃撃(テロ)かと思ったが、銃撃を行ったのは一人であった。屋外のコンサート会場を標的に、ホテルの32階という高所からの銃撃である。コンサートの大音量が流れるなかで始まった銃撃であったため、観客たちが銃撃されていることを認識するまでに時間がかかったのであろう、避難行動を開始するのが明らかに遅れていたようだ。

 高所から銃撃されたこともたいへん不利なことであった。犯人がいた部屋の窓からコンサート会場を狙った場合、銃弾が外れて地面(ほとんどがアスファルトとコンクリート)に当たっても、その銃弾は「跳弾」として非常に小さな角度(地面から数センチ〜20センチ程度の高さ)で殺傷能力を保持したままさらに飛んでいく。つまり、あの時の状況では地面に伏せている状態は決して安全とは言えないのである。とにかく現場から遠くへ逃げるか、頑丈な遮蔽物に隠れるしか方法はない。しかしながら、銃撃が発生した時点ではそれが近距離からか遠距離からか、単独犯か複数犯かなどがわからないため、判断が非常に難しくなるだろう。


 映像を見ると、犯人が撃っていた窓からコンサート会場まで遠いように思えるが、実際の距離は400メートル前後といったところだ。高い位置から撃っていることを考えれば非常に近い距離と言える。犯人のいた部屋から複数のスコープも見つかったことを考えると、使用した銃器のなかには射程距離の長いものもあった可能性がある。そうだとするとまだ銃撃が続いている状況のなかで、犯人がいるホテルに向かって一部の観客が挑発的な仕草をしていたのはたいへん危険なことである。
 ちなみに戦場での長距離狙撃では、3450メートルが最長距離記録である。これはあくまで特定の標的を狙っての記録であるため、乱射した銃弾が人に当たるというケースではさらに長距離であっても危険である。


 なんといっても米国が銃社会であることが、今回の事件を含めてこれまで多くの犠牲者を生んできた最大の要因であろう。米国自身が顔をそむけずにきちんと向き合うべき問題であると思える。