5/21放送 NHK視点・論点「新型インフルエンザ対策」

 昨日の放送分ですが、ほとんど話題にされないまま埋もれてしまいそうなのでメモった内容を書いときます。


●菅谷憲夫先生(神奈川県警友会けいゆう病院 小児科部長)
  専門は小児科学・臨床ウイルス学
  WHO新型インフルエンザ治療ガイドライン委員会委員


1.日本では流行が始まっているわけではなく、あちこちで煙が上がっている状態で火は上がっていない。夏にかけて今回の大阪・神戸のような集団発生はあるだろう。


2.秋から冬にかけて本格的に流行する。3200万人が感染すると予想される。


3.「弱毒」というのは鳥インフルエンザのみで用いられる用語であり、人インフルエンザには弱毒・強毒という区別はない。臨床的に重症か軽症かということだけ。
弱毒という用語を使ったため誤解を与えているが、通常のインフルエンザと比べて重症にならないということでは決してない。ハイリスク患者だけでなく、若い健康な人もタミフルなどの薬で治療すべき。


4.水際対策は欧米では行っていない。専門家から見ると不可能との見方が多いため。検疫は今の段階ではもう中止すべき。


5.発熱外来も欧米にはない。なぜなら自覚症状が出る半日から1日前にはウイルスを周りにまき散らし始めるからだ。体調が悪いと思ったときにはもう周囲にうつしている。会社で具合が悪いと思ったときにはすでに同僚にうつしている。帰りの電車の中では他の乗客にうつしている。家に帰ったら家族にもうつす。翌日発熱外来に行くまでにさんざんうつしているので意味がない。


6.今は大阪・神戸でくすぶっている段階だが、いったん感染が広まると日本国内の25パーセントが感染(3200万人)。数年以内に全員が100パーセント感染する。これは大事なポイント。それを前提にして治療・入院ができる体制を整えるべき。


7.ワクチンは今年秋の流行には間に合わない。抗ウイルス薬の予防投与も考えるべき。


8.重症化する場合、細菌性肺炎になる。まずは抗生物質で治療するが、さらに悪化すると人工呼吸器が必要。流行に備えてそれらを備蓄する必要があるが、人工呼吸器はいまの時点ではまったく足りない。


9.イベントの中止などは流行の広がりかたによって判断すべき。社会の経済的損失が大きくなりすぎるような事態は避けるべき。


10.現在の「くすぶり流行」から「大流行」に移行するまでの数ヶ月の間に、すべての病院が診察できるよう体制を整えるべき。


以上が番組の内容でした。一部矛盾するような部分はありますが、おおむね現実的なお話でした。


●参照URL
新型インフル「慌てず秋に向け対策を」/横浜 けいゆう病院小児科部長に聞く  http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryivmay0905573/
上記は神奈川県ローカルサイトに載った菅谷憲夫先生の談話。併せて読むとよりわかりやすいです。


社団法人日本感染症学会緊急提言「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」 ※PDFファイルです
http://www.kansensho.or.jp/news/090521soiv_teigen.pdf
現時点でもっとも信頼できる筋から、もっとも信頼できる内容の資料と思われます。政府筋・マスコミ筋・ブロガー(私も含む)などの不確実な情報を正しく評価するためにも、情報はちゃんとしたところから得るようにしたいものです。

社団法人日本感染症学会  http://www.kansensho.or.jp/index.html