聴竹居(京都府乙訓郡大山崎町)


 先日テレビで取り上げられているのを見て、ひと月ほど前に予約し、見学に行ってきた。


●参照URL
  公式サイト
   http://www.chochikukyo.com/


 一般の見学は週に3日で、一日4回に分けての見学となる。写真の撮影はあらかじめ所定の書類をプリントアウトして必要事項を記入しておき、見学するときに提出する必要がある。撮影した写真をブログやホームページなどに無断で掲載することは禁じられており、許可をもらわなければならない。


 見学は係のかたの説明を聞きながら1時間ほどと、その後は時間の制限がくるまで自由に見ることができる。
 写真撮影は他の見学客の邪魔にならないようにしなければいけない。シャッター音を小さくできて、取り回しもいいコンデジが使いやすいだろう。室内は照明が暗いので、なるべくF値の小さい明るいレンズが適している。
 写真撮影の許可を受けたとき、首にかける許可証を貸与されるが、帰り際に返し忘れないよう気をつける必要がある(私は危うく返し忘れた)。


 説明内容をメモするのには、いつものようにシステムダイアリーを使った。以下に、その内容の一部を箇条書きで書いておく。


・聴竹居を建てるまでに、藤井厚二は実験住宅を建てた。聴竹居のすぐ横にある茶室のあるあたりに、水平方向に回転する住宅を建て、700日ほどかけて日の当たる方向・角度、壁や室内の温度変化、風の吹いてくる方角や流れなどのデータを収集した。それらのデータを元に修正を加えていき、最終的に聴竹居を建てた(詳細は藤井厚二が著した「日本の住宅」に記載されている)


・屋根が緩やかで、庇が長い。これにより夏の日差しを遮り室温上昇を抑える。冬場は日が低いので室内まで日光が入る。聴竹居の庇の長さは、宮城県から九州までの範囲で適合する。

・小舞壁を使うことで湿気や温度がこもらないようにしている


・1928年の建築当時では異例と言える天井の高さ


・居間は30平方メートルあり、家で生活している家族が中心となる設計(客間は狭い)
・居間の天井灯(円形)は3つで、サイズがそれぞれ異なる


・実験住宅(聴竹居を含む)の建築費用は、藤井厚二の兄が出している(藤井家はたいへんな資産家だった)


・神棚・仏壇は格納されていて、普段は目に見えない状態になっている


・サンルームの天井から屋根にかけては仕切り板で2層構造になっており、銅板の屋根からの熱は仕切り板によって作られた空気の層によって室内へと及ばないようにしてあり、屋外へと排出される

・サンルームのガラスはドイツ製で、建築当時から現在まで1枚も割れていない。阪神淡路大震災震度5でも被害がなかった

・サンルームの窓枠は、開閉した時に隙間ができないような削り方がされている


・各部屋の敷居は完全にバリアフリーになっていて段差はない


・お風呂を沸かすのは薪を使うが、それ以外の熱源(コンロ、冷蔵庫、電気温水器)・照明はすべて電気(オール電化
・サンルームに置いてある電気ストーブは藤井厚二のデザイン。電源投入直後は電熱線が赤くなるが、その後青くなる


・勉強部屋は作り付けの机が3つ(娘二人と藤井厚二がそれぞれ使用)
・各机に、電気スタンド用のコンセントがある。また、天井は明りが反射しやすいよう竹で編んである
・娘の机にはプライバシーを保護するため鍵付きの引き出しが備え付けてある


・客間は椅子・ソファーとテーブル。椅子は和服に帯をした女性の服装に対応したデザイン
・蓄音機が置いてあるが格納されたまま音が流れるようになっている


・食堂は外から見えないように15cm居間より高くなっている
・食事は台所で女中が作り、引き戸を開けて食堂側に出す
・調味料などを収納している棚は、台所側からも食堂側からもアクセスできる
・食堂の天井にはかつて金箔が装飾されていた。そのため食堂にある天井灯のサイド部分には、明かりがもれて金箔を照らすように穴が穿ってある

・台所にはスイス製の電気冷蔵庫がある。触媒はアンモニア
・シンク横には生ゴミ用のダストシュートがあり、噴霧状にした水を勢いよく吹き付けることで、ゴミが付着しないような構造になっている
・台所の壁やタイルは白で統一されていて明るい

・風呂は薪を使っているため、メンテナンス業者専用に潜り戸が作られている



 見学前に何冊か聴竹居関連の本を読んでいたが、それらには書かれていない内容がたくさん聞けた。係の人によって説明のポイントが違っているらしいので、1回と言わず各季節ごとに訪れたいと思った。ちなみに今の時期は新緑がとてもきれいである。


 このような住宅が90年前に建てられたとは、驚くばかりである。建物そのものは部分的にかなり老朽化しているところもあり、以前は立ち入って見学できたところが立ち入れなくなった部分もあるらしい。
 今のところ一般見学では日本語のガイドしかなされていないようだ。同時刻に見学していた人たちもすべて日本人だったので、京都市内の観光客とは違って外国人の数は極めて少ないと思われる。


今日の動画
  John Coltrane - I Wish I Knew
   https://www.youtube.com/watch?v=ju02Q2dfYDw