綿向山で滑落遭難事故
昨日2/21(土)に竜王山縦走路にて発生したもよう。けがは骨盤骨折ということですが、防災ヘリで救出されたとのことです。
●綿向山を愛する会
http://www.mt-watamuki.org/ziko.html
発生箇所ですが、1/6に以下の日記に書いた場所とまったく同じところでした。レスキューポイントNo.1とNo.2とのちょうど中間地点にあたります。
●参照日記
登山用ストック
http://d.hatena.ne.jp/SASGSG9/20150106
綿向山山頂を経ての竜王山縦走ルートの中では傾斜がもっともきつく、冬期・無雪期いずれにおいても一番危険な箇所だといえます。
新雪が40〜50cm以上積もった直後や、クラスト(凍結)していない雪面にさらに新雪が積もった状況であればアイゼン未装着でも通過可能です。しかし、いったん下り始めてしまうと途中で作業するスペースがないため、原則として962mピークでアイゼンを装着しておくべきでしょう。スノーシューのままで通過するのも危険ですので、アイゼンに付け替えるべきです。
また、この箇所では雪面がクラスト(凍結)していることも多く、10cm以上の新雪が積もっている場合でもその下が凍った状態というケースがよくあります。そのため、ストックではなくピッケルを使う必要がある場合も多いです(ストックでは深く刺さらない)。
以上のことから、アイゼン装着・ピッケル使用で下るのがもっとも安全と言えます。ピッケルを雪面に突き刺して支点にしつつ、木の幹やトラロープなども使いながら降りることになります。アイゼンで雪面に足場を作りながらきっちり三点支持を確保するようにしなければなりません。綿向山・竜王山縦走ルートはほぼすべてがレベル1〜2ですが、この部分はレベル3となりますので、基本的なクライミング技術・アイゼンワーク・ピッケルワークが身についていないと危険です。
万一滑落するなどして歩行不能になった場合は、早い段階で救助要請をするように決断したいところです。また、万一に備えて装備には必ずツエルトを加えておきましょう。
2/11に録画したビデオ(ソニー アクションカム)のキャプチャ画像。ここがもっとも危ないと思われる箇所。いったん滑落すると木にぶつかりながらかなり下まで落ちていくため慎重に下ります。
先の写真から右方向へ行き、さらに左に戻ってきた箇所。昨日の滑落遭難者(女性)はこの斜面の向こう側をさらに下まで落ちたのではないかと推測されます。
●参照書籍
空飛ぶ山岳救助隊 (ヤマケイ文庫) | |
羽根田 治 山と渓谷社 2011-05-23 売り上げランキング : 329614 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
現在の山岳遭難救助はヘリコプターが主流になっています。ヘリによる救助を確立させた篠原秋彦氏(故人)の伝記。レスキューに関することだけでなく、仕事に対する姿勢などにたいへん感銘を受けました。
■参照動画
【レスキュー 『篠原 秋彦の軌跡』1_6】
https://www.youtube.com/watch?v=5HvWVAi9d4Y