登山用ストック


 正月は4日まで仕事だったため、二日続けて降った大雪直後には登山に行けませんでした。ようやくやってきた休日の1/5にいつもの綿向山へ行ったのです。


 気温は登り口(標高400mほど)で0度くらい。前日の雨もあって雪がたっぷり水分を含んでおりいちばん歩きにくい状態です。5合目あたりからは雪の量も増え、雪が締まってきたため歩きやすくなりました。

 7合目の手前くらいで前方に木の枝が何本か登山道上にあるのを発見。大雪の時には木の枝にも雪が積もるため、弱くなっている木の枝があちこちで折れるのでそれ自体は珍しいことではありません。しかしこのときの枝は重さが5kgほどあるようなものが含まれており、頭に直撃を受ければ場合によっては死ぬくらいのものだったのです。冬にこの山を歩くとき(今までに30回ほど登っている)には命の危険を感じることはこれまでありませんでした。積雪による折れた木の枝の落下という、低山ならではの危険があるのだと改めて認識したのでした。


 7合目からはいつものように強風が左側から吹き付けてくるため、登山用キャップからバラクラバへと装備を変更。雪面は氷結しているところも見あたらないためピッケルは使わずストック2本でそのまま登っていきます。正月休み中に多くの登山者が登っていたようで、踏み跡がしっかりついているため楽に歩けます(できれば新雪ラッセルしたかった)。


 頂上は風も弱かったのですが、完全にガスの中に入っており太陽は顔を出してくれません。10分ほどパンをかじりながら待ちましたが晴れてきそうにないため出発することに。バラクラバに加えてゴーグルを装着。これから向かう竜王山の縦走ルートまでは向かい風がきついため、大げさでもこの装備で歩きます。ただし写真を撮るためにグローブは薄手のものをつけているため、指先が冷たくなってきたら腕を40回くらいブンブン振り回して回復させるようにします(遠心力で血流を指先まで送る)。


 竜王山への縦走ルートの開始地点はレスキューポイントNo.1から始まります。ここからはいきなりの急な下り。無雪期には時間をかけて慎重に下る必要があるほど急なのですが、積雪がある場合はむしろ歩きやすくなります。今回は雪も膝下くらいまで残っているため楽しく下れます。ただ、途中で木をつかみながらでないと降りられないところが数カ所あるのですが、問題はそこで発生しました。

 木をつかむところでは両手に持っているストックが邪魔になるため数メートル下にストックを「ポイ」と落としてから降りていき、ストックを回収してまた下山を続けることを2,3回繰り返すようにしています。これまでその方法で特に問題は無かったのですが、今回はストックを投げ落とした距離が長すぎたため、2本のうちの1本が尾根の左側へと落下し始めてしまったのです。横向きになってコロコロと転がっていくストックを見ながら「止まれ止まれ」と声を出しますが、意に反してどこまでも転がり続けます。だんだんとストックの向きが斜面と垂直方向に変わっていきようやく止まりました。登山道から20mほど下の斜面に停止している状態。
 さて面倒なことになりました。まずは斜面の角度を確認。ポケットに入れているSuunto MC-2コンパスを取り出し、それについている傾斜計を使って斜面の角度を測ります。いちばんやばそうな38度(もっとも雪崩が発生しやすい角度)あたりの角度だったため、前日までの天候と地形を考えます。この山域ではほとんど雪崩の心配をしなくていいのですが、今回はルートを外れた斜面にあるストックを回収しに行くことになるため危険性が高くなります。先の二日間で積もった雪はその後の雨によってかなり湿っており、周辺と比べても樹木が少ないためやはり危険性は高い状況。
 斜面に対して垂直方向で降りていくのが雪崩発生可能性を最小にするため、ストックに対して数メートルずれたところから下降を開始。こうしないと下るときに発生した雪玉によってさらにストックが転がり落ちて行く可能性があります。ようやくストックに近づいたところで角度を斜め方向に変えてストックを回収。すぐに元の踏み跡をたどりながら登り返して登山道に復帰しました。回収中はザックをずっと背負ったままです。空身のほうが回収自体は楽ですが、万一雪崩が発生したり滑落してしまった場合に装備をすべて失うことになるためザックをおろしてはいけません。


 今回はストックを下に放り投げることが問題を引き起こしたのですが、対策としてNite Ize Gear Tieの12インチサイズを2本持って行き、ストックが邪魔になるところではそれを使ってザックに固定するようにしたいと思います。


 その後竜王山の頂上へと到達して下山を開始。標高600m以下になると雪もかなりゆるんだ状態で、ところどころデブリ(雪塊)も見られました。斜面があればどこでも雪崩は起きうると認識した次第です。



 霧氷はたっぷりついていましたが、ガスのため見た目はいまひとつ。


 ブナの珍変木あたりも雪庇ができています。


今日の動画
  СЛОТ - Несовпадения (Lyric's)
   https://www.youtube.com/watch?v=WckuQCWnROY