挑戦と応戦

 先日ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝された辻井さんのことはニュースなどでご覧になった方も多いと思います。全盲というハンディキャップを持ちながら・・・というより、ハンディを持っているからこそなしえるものもあるのではないかと思えるような快挙でありました。


■ジャズ界での例
 ジャズの世界にもハンディを乗り越えて一流の演奏家になった人はけっこういるのですが、その中で先入観なしに大好きになった演奏家を3人紹介したいと思います。


ジャンゴ・ラインハルト
ジャンゴ・ラインハルトステファン・グラッペリ DJANGOLOGY Gypsy Guitar
http://www.youtube.com/watch?v=aiBe-XAR7ok
 ジプシーのギタリスト。18歳のときにキャラバンが火事になり、左半身に大やけどを負ったのですが、医者から下された「左腕を切断しなければならない」との診断をはねのけてリハビリに励みました。結局左手の小指と薬指はほとんど動かすことができなくなってしまいましたが、ジャズギター史上もっとも重要な一人として名を残しています。
上記の動画を見ると分かるかと思いますが、左手はほぼ人差し指と中指のみで弦を押さえています(ときおり薬指と小指、それに親指も使います)


レニー・トリスターノ
Lennie Tristano - Tangerine (Copenhagen '65)
http://www.youtube.com/watch?v=lGLpczTtnEM
 生まれてまもなくスペインかぜにかかったため視力が極端に低下し、9歳くらいには全盲になってしまったようです。
左手が低音域をひたすら徘徊する独特のハーモニーが特徴的です。この人の演奏を聴いたことのない自称ジャズ通が「シブい」と評価することで有名。実際には非常にスイング感あふれる演奏です。


ミシェル・ペトルチアーニ
ミシェル・ペトルチアーニ 「Brazilian Like」 Michel Petrucchiani
http://www.youtube.com/watch?v=0O3t-_6JM30
 生まれながらに骨形成不全症という病気だったため、成人しても身長が1メートルもありませんでした。少し強い力が加わっただけで骨折するという病気であるにもかかわらず、とても力強い演奏を聴かせてくれます。
1999年、36歳で夭折。


 科学のことばで言えば、外部から侵入する要因の機能は、その要因が突き当たる対象に、一番効果的で創造的な変化を誘発するのにもっとも適した種類の刺激を与えることであると言ってよい。神話と神学のことばで言えば、完全な陰の状態を新たな陽の活動へ移行させる衝動や動機は、悪魔の神の世界への侵入によって生じる。

アーノルド・J・トインビー 「歴史の研究1(サマヴェル縮刷版)」p119