トイレの中での知的生産

 よいアイデアが生まれる場所として昔から言われているところに、「馬上、枕上、厠上」の三つがあります。
 現代に置き換えれば、「移動中の車内(電車内)、ふとんの中、トイレの中」となるのですが、最後の「トイレの中」というのは軽視されがちだと思います。ここは純粋な生理的欲求を満たす場所であるが故に、急いでいる場合などは手ぶらで入ってしまい、ふと思い浮かんだアイデアなどを記録しておく手段が無かったため、せっかくのアイデアがそのまま雲散霧消してしまうことが多いのです。


 人によっては、普段から愛用している手帳やメモ帳を持ち込んで、トイレの中でもメモ取りができるように心がけていると思います。忘れずに必ず持ち込むことが習慣になっていれば問題無いのですが、私の場合は持って入るのを忘れて「しまったあ!!」と思うことが幾度となくありました。
そこで7,8年前に、「トイレの中にメモシステムそのものを構築しておこう」と考え、写真のものを備え付けました。洋式の便座に座った右斜め前にこのシステムが備えられております。


■システムの中身
<リーガルパッド>
 これは米国の弁護士・検事などが必ず使っているものです。「七人の弁護士」という米国の海外ドラマの中で、ほぼ全員がこのリーガルパッドを使っていました。それを見て私も13年くらい前から使い始めました。
当時システムダイアリー(SD)を愛用していたのですが、SDはサイズが小さいため、考えを図解しながら展開していくようなことは困難です。そのため大きなサイズの用紙が必要になるのですが、まさにこのリーガルパッドはうってつけだったのです。
 米国では法曹界だけではなく、ビジネスやジャーナリズムの世界でもこのリーガルパッドが使われているようです。映画「大統領の陰謀」の中で、ロバートレッドフォードが扮する「ボブ・ウッドワード」が電話での取材の時にリーガルパッドにつぎつぎにメモを書いていくシーンがあります。
 ただし、米国でリーガルパッドが「記録システム」のひとつとして機能しているのは、書き込みが終わって切り離された用紙が、その後に「ファイリングシステム」へと確実に格納されるからです。このシステムが構築されていないままにリーガルパッドを使うと、せっかく書き込んだ情報もどこかに山積みされたのちに廃棄されてしまい、何の意味もなくなることになります。デジタルデータに入力し直すか、スキャナーで取り込むか、またはそのままファイリングシステム(私の場合は袋ファイル)に収納するか、いずれの手段であれ、後で検索しやすいように整理することが大事です。


RHODIA
 サイズはNo.11。リーガルパッドに書くまでもないようなちょっとしたメモ取りに使います。トイレを出るときに、メモった用紙のみ「ピッ」と切り離して、次の工程に回します。


ポストイット
 黄色と青色の2種類。外出するときに忘れてはいけない事柄が思い浮かんだときには、赤のサインペンでこれに記入。トイレを出たら、玄関のドアに貼り付けておきます。そうするとまず忘れることはありません。


<筆記用具>
 シャープペンシル2本。ぺんてるサインペン黒1本、赤1本。
リーガルパッドへの記入は、サインペンが非常に書きやすいです。


<幼稚園児用のハンガー>
 500円で購入。まさにこのメモシステムのために作られたかのようにぴったり。気に入ってます。




 トイレの中では無線LANが使える環境にしてあるので、M1000で調べ物をする場合もあります。しかし、あえて「何も無い」環境にしておくほうが、斬新なアイデアが生まれやすいのではないかと思います。それは冒頭の「馬上、枕上、厠上」が「考える他に何もできない状態」であることと通じているのです。