「オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ」 天野 貴元 (著)


オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ
オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ天野 貴元

宝島社 2014-03-12
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 「聖の青春」の映画化などにより、より多くの人が将棋に興味を持つことはいいことである。趣味として長く楽しめるし、自分のレベルに応じて取り組んでいけるからである。
 しかし、そのレベルが高くなっていくとある段階からプロ棋士になろうという人が出てくる。そのほとんどが小学生から中学生にかけての年齢層なのであるが、将来プロになれるのはごく少人数に限られる。きわめつきの狭き門なのである。


 以前も書いたように、かなり昔に将棋に熱を上げていた頃、将棋雑誌「将棋世界」を毎月購読していた。巻末あたりにプロ棋士の養成機関である「奨励会」の情報が数ページ掲載されていた。もちろん今でも奨励会の情報は載っているのであるが、内容は必要最小限といったところだ。一方で昔は今よりもっと多くの情報が掲載されており、読んでいて面白かった。その後将棋をパタリと止めてしまったので、その当時の奨励会員にどんな人がいたかは覚えていない。しかし、例外的にはっきり覚えていたのが村山聖棋士だった。当時の記事には顔写真も時折掲載されていたのであるが、ニコニコした村山棋士の顔写真はよく覚えている。「怪童丸」「肉丸くん」などのあだ名もよく書かれていたのでより鮮明に覚えていたのであろう。


●参照URL
  新進棋士奨励会
   https://goo.gl/bO4XJ1


 村山聖棋士のように短期間で奨励会を駆け抜けてプロになる人がいる一方、年齢制限によってプロになれずに奨励会を退会する人もいる(退会者のほうが圧倒的に多い)。
 表題の著作は年齢制限によって奨励会を去らざるを得なかった元奨励会員によって書かれたものである。元奨励会員によってこのような文章が書かれることはきわめてまれであろう。
 この本を読むといかにこの世界が過酷であるかがよく分かる。そして、奨励会を去ってまもなく著者に告げられるガン宣告。。。著者にこの本を書かせたのはガンになったためであるのは間違いないであろう。ガンに侵されながらも将棋の普及にかかわっていこうとする著者の姿勢には胸を打たれた。


今日の動画
  【将棋】ザ・ノンフィクション 余命宣告を受けた天才と呼ばれたアマチュア棋士 「生きて 〜天野貴元30歳」 ドキュメンタリー
   https://www.youtube.com/watch?v=7rjU2lq_jVM